概要:アジア開発銀行(ADB)の浅川雅嗣総裁は23日、米連邦準備制度理事会(FRB)による急ピッチな利上げに伴う域内での金融危機リスクに備え、日中韓と東南アジア諸国が集まる「ASEANプラス3」で金融協力強化の議論を加速させる必要があるとの考えを示した。近く開かれるADB総会に先立ち、ロイターのインタビューに応じた。
9月23日 アジア開発銀行(ADB)の浅川雅嗣総裁は23日、米連邦準備制度理事会(FRB)による急ピッチな利上げに伴う域内での金融危機リスクに備え、日中韓と東南アジア諸国が集まる「ASEANプラス3」で金融協力強化の議論を加速させる必要があるとの考えを示した。写真はロイターのインタビューに答える浅川氏。
[東京 23日 ロイター] - アジア開発銀行(ADB)の浅川雅嗣総裁は23日、米連邦準備制度理事会(FRB)による急ピッチな利上げに伴う域内での金融危機リスクに備え、日中韓と東南アジア諸国が集まる「ASEANプラス3」で金融協力強化の議論を加速させる必要があるとの考えを示した。近く開かれるADB総会に先立ち、ロイターのインタビューに応じた。
1997年7月のアジア通貨危機では、各国の急激な通貨下落(減価)を招いた。浅川総裁は「当時に比べればアジア地域の経常収支は改善し、外貨準備も積み上がっている。チェンマイ・イニシアチブ(通貨協定)も結び、システム全体としての金融危機への耐性は格段に高まっている」と語った。
一方、金融・資本市場の動きが荒い現状に「しっかりモニタリングする必要はある」と指摘し、「場合によってはASEANプラス3で話してきた金融協力強化の議論を加速化させ、いざという場合の備えをしておくことが必要」と述べた。
状況が悪化した場合には「アジアの途上国が介入して自国通貨の減価を抑えたり、最終的には資本規制を導入することもツールのひとつとしてはあり得る」とした。「今はそこまではいっていない」との認識も併せて示した。
域内の中央銀行が年明け以降、政策金利を引き上げ始めたことに関しては「自国通貨に対して減価圧力がかかっているからだと思う」と語った。
ただ、浅川総裁は「結果的に減価していないかというと減価もしている。(域内中銀は)バランスを取りながらやっていると思うが、プルーデントな金融政策をやって欲しいし、まさに今、そういう方向で注意深く各国中銀が対応している途上」と述べた。
アジア各国の税収が対国内総生産(GDP)比で15%程度と、経済協力開発機構(OECD)平均の30%台半ばを下回る現状を踏まえ、「逆に言えば租税政策の改革などを通じて税収を上げていく余地がある」とも指摘。「途上国の間で税の議論を活発化させ、税収を上げて対外借り入れを減らす道を中期的には実現すべき」と語った。
(梶本哲史、木原麗花、山口貴也 編集:久保信博)