概要:世界金融危機前後の2007年から2年間、財務官を務めた篠原尚之氏はロイターとのインタビューで、政府・日銀による為替介入について「1ドル=145円を防衛ラインに介入を続けることはないだろう」と語った。投機的な動きを背景に乱高下する為替市場に対応した日本の立場に、米国はあえて反対しなかったとの見方も示した。
[東京 26日 ロイター] - 世界金融危機前後の2007年から2年間、財務官を務めた篠原尚之氏はロイターとのインタビューで、政府・日銀による為替介入について「1ドル=145円を防衛ラインに介入を続けることはないだろう」と語った。投機的な動きを背景に乱高下する為替市場に対応した日本の立場に、米国はあえて反対しなかったとの見方も示した。
世界金融危機前後の2007年から2年間、財務官を務めた篠原尚之氏は9月24日のロイターとのインタビューで、政府・日銀による為替介入について「1ドル=145円を防衛ラインに介入を続けることはないだろう」と語った。スリランカの首都コロンボで2013年11月撮影(2022年 ロイター/Dinuka Liyanawatte)
日本は1998年6月を最後に円買い介入を行っていなかった。24年3カ月ぶりとなる22日の円買い介入について、篠原氏は「引き続き金融政策の緩和は力強くやっていく必要はあるが、為替市場が乱高下した際は介入するということだろう」と述べた。インタビューは24日に実施した。
もっとも、「介入で相場の大きな流れを変えることは不可能」とし、「(円買い介入を)頻繁にやったり、マーケットに水準を意識させてしまうやり方をすれば米国が許容できないのではないか」と指摘。一定の防衛ラインを念頭に、介入を繰り返すことに否定的な見解を示した。外貨準備を使う円買い介入には量的な制約もあるとした。
今回の為替介入を米政府が容認する立場をとったことについては「乱高下に対応したという日本の説明であれば、米国はあえて反対しないということだろう」と解説。主要7カ国(G7)は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きが「経済・金融の安定に悪影響を与え得る」とする認識を共有している。
<アクセルとブレーキ踏んだ状態>
篠原氏はインタビューの中で、日銀の黒田東彦総裁が当面は政策金利引き上げを考えていないと発言した直後の円買い介入だったため「アクセルとブレーキを一緒に踏んでしまった印象を受ける」とも話した。
金融政策決定会合後に行った22日午後の記者会見で黒田総裁は当面は金利を引き上げる必要はないとした上に、金融政策の先行き指針(フォワードガイダンス)の変更も「2―3年はない」と表明した。
篠原氏は「従来より(緩和継続への)決意を固くした印象。方向性としてはマーケットにどんどん円を流し続けると言っているに等しい」と語った。「一方でドル売り(円買い)介入をした。これは市場から円を吸い上げる方向のオペレーションで、アクセルとブレーキを一緒に踏んだ状態」と指摘した。
「車はアクセルとブレーキを両方踏み続けるとブレーキが焼けてしまうか、ハンドルがコントロールできなくなる。このまま(の状態を)ずっと続けるわけにはいかないだろう」と篠原氏は語った。
篠原氏は、財務官退官後の10年から国際通貨基金(IMF)の副専務理事を5年間務め、100年に1度とされる金融危機の事後処理を担った。
(インタビュアー:木原麗花 日本語原案作成:山口貴也 編集:久保信博)